東京地方裁判所 昭和28年(ワ)10434号 判決
原告 時友信雄 外一名
被告 後藤長清
一、主 文
被告は原告等に対し東京都渋谷区代々木上原町千百十一番の一宅地六百九十七坪一合のうち別紙図面<省略>表示の斜線部分二十一坪一合をその地上に存するコンクリート土台を収去して明渡し、且つ金二千五百六十五円及び昭和二十九年四月一日から右明渡ずみに至るまで一カ月金二百五円の割合による金員の支払をせよ。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は原告等が金二万円の担保を供するときは、仮にこれを執行することができる。
二、事 実
原告等は、主文第一、二項同旨の判決及び仮執行の宣言を求める旨申立て、その請求の原因として
(一) 原告等は
(イ) 東京都渋谷区代々木上原町千百八番の一
(ロ) 同番の二
(ハ) 同番の三
(ニ) 同番の四
(ホ) 同番の五
(ヘ) 同番の六
(ト) 同所千百十番の一
(チ) 同番の二
(リ) 同所千百十一番の一
(ヌ) 同番の二
の土地を共有している。右土地は代々幡復興第一区劃整理組合の土地区劃整理の対象となり、昭和二十六年三月三十日同組合から右(イ)(ロ)(ハ)(ホ)(ト)(リ)の土地につき換地予定地が指定された。
(二) しかるに昭和二十七年八月中旬頃右(リ)の換地予定地のうち別紙図面の斜線部分二十一坪一合に建物築造に着手し、コンクリートの土台基礎工事をするものがあつたので、原告等が調査したところ右建築は許可を得ていない無届建築であり、被告がその建築主であることが判明した。被告は右土地を占有するにつき原告等に対抗し得る何等正当の権原がないのに、不法にも原告等の右土地に関する権利を侵害し、賃料相当の左記損害を蒙らせている。なお被告の右土地不法占有開始の日時は、昭和二十七年八月二十日(原告等が被告に対する東京地方裁判所昭和二十七年(ヨ)第四一九六号不動産仮処分申請事件の仮処分決定にもとずき本件土地につき仮処分執行をした日の翌日)以前であるから、同日以降の損害について請求する。また賃料相当額は右土地の地代の停止統制額によつたもので、その計算の基礎となる右土地の固定資産税評価額の坪当り価額は昭和二十七年度は二千二百円、昭和二十八年度は二千八百円、昭和二十九年度は三千二百四十円である。
左記
期間(年月日の呼称省略) 右土地の賃料相当額一カ月分 同上期間の損害金合計
昭和二七、八、二〇より二八、三、三一まで 一〇二円 七五三円
二八、四、一より二九、三、三一まで 一五一円 一八一二円
合計 二五六五円
二九、四、一より明渡ずみまで 二〇五円 ――
そして右土地に関する権利は原告等の共有であつて、その持分は平等であるから、原告等各自の損害賠償請求額はそれぞれ全額の半分である。
よつて原告等は右換地上に共有する前記権利にもとずき被告に対し右土地二十一坪一合をその地上に存するコンクリート土台を収去して明渡すと共に、被告の不法占有によつて蒙つた原告等の損害賠償として金二千五百六十五円及び昭和二十九年四月一日から右明渡ずみに至るまで一カ月金二百五円の割合による損害金の支払を求めるため本訴請求に及んだと述べ、被告主張の抗弁事実中被告が原告等から換地前の東京都渋谷区代々木上原町千百十番宅地のうち四十一坪を賃借していたこと右土地につき区劃整理があつたこと及び被告が区劃整理組合に賃借地の届出をしなかつたためその換地の指定がなかつたことは認めるが、その余の事実はすべて否認する。被告の借地については、原告等が指定を受けた換地の上に指定することにはなつているが、原告等が指定を受けた換地は被告の借地の外原告等が他に賃貸していた者でその借地届出をしなかつた者の借地の換地予定地をも含めて一括して指定されたので、それ等関係者と協議して換地を割当てた上でなければ被告のみの換地指定はできないところ、借地人との間に未だその協議も成立していないから、被告の借地について換地が定まつていないのであると述べた。<立証省略>
被告訴訟代理人は、合式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭しないが、当裁判所が陳述したとみなした被告提出の昭和二十九年一月十二日附答弁書には、「原告等の請求を棄却するとの判決を求める、原告等の請求原因中(一)の事実は認める。(二)の事実中被告が原告等主張の土地に建築を開始したことは認めるが、その余の事実はすべて否認する。被告の右土地の占有は正権原にもとずくものである。すなわち被告はもと原告等から東京都渋谷区代々木上原町千百十番宅地四十一坪を賃借していたところ、右土地につき原告主張の区劃整理があり、被告がその借地届出をしなかつたため、被告に対しては換地の指定がなかつた。そこで被告は昭和二十七年四月二十三日原告等に被告の借地につき換地協定を申入れ、原告等の同意を得て整理組合に行き同所千百十一番及び千百十三番の三の土地に換地の特定を受けた。これは組合としては既に地主に対し一括して換地を指定したので、別に被告に対しては借地の換地の指定をしないが、地主に指定した換地内で被告の借地の換地は特定し得るもので、被告はその特定された本件土地に建物の建築にかかつたものであるから、被告の本件土地占有は何等不法のものでない」旨の記載があり、原告等提出の甲号各証については認否をしない。
三、理 由
原告等がその主張の土地を共有し、その土地が代々幡復興第一区劃整理組合の土地区劃整理の対象となり、昭和二十六年三月三十日同組合から右土地の大部分につき換地予定地が指定されたことは当事者間に争がない。
そうすると原告等は特別都市計画法第十四条第一項第十三条により、右換地予定地指定の通知を受けた日の翌日から右換地予定地について従前の土地に存する権利(すなわち原告等の土地所有権)の内容たる使用収益と同じ使用収益をすることができる権限を有するに至つたものであることは明かである。
しかるに被告が右換地予定地の一部である別紙目録記載の斜線部分二十一坪一合の土地上に原告等主張のような建築工事にかかつたことは当事者間に争がなく、当裁判所が弁論の全趣旨により真正に成立したと認める甲第四、第五号証によれば、被告は右土地の上に建物を建築しようとしてコンクリートの土台基礎工事をし、現に右地上に右コンクリート土台が存し、被告が右土地を占有していることを認めることができる。
被告は右土地占有は正権原にもとずく旨主張するが、右事実を認めるに足りる証拠はなく、却つて前顕甲第四、第五号証及び弁論の全趣旨により真正に成立したと認める甲第二号証、同第三号証の一、二並びに弁論の全趣旨を考え合せると、被告は原告等から換地前の千百十一番宅地のうち四十一坪を賃借していたが、区劃整理にあたり整理組合にその借地の届出を怠つたため、被告にはその借地の換地予定地の指定なく、地主に一括して換地予定地が指定されたため(以上の事実は当事者間に争がない)、被告はあらためて原告等から右の換地予定地のうちに被告の借地換地予定地の指定を受けることを要するところ、原告等の右換地予定地には被告と同じように未届のため換地予定地の指定を受けなかつた借地人も多数いて、これ等の者と協議しその割当をした上でなければ、原告等が被告の借地の換地予定地を指定することができないので、未だ被告のため借地の換地予定地を指定しないでいたところ、被告が勝手に本件土地にその指定を受けたとして前記のように建物の建築を始め、これを占有したことを推認するに難くないから、被告の右土地占有は不法のものと断ずる外はない。
そうすると被告は原告等が右土地について有する前記所有権と同一の使用収益する権限を侵害しているものというべきであるから、右土地の上に存する前記コンクリート土台を収去して右土地を明渡すと共に右土地の不法占有によつて原告等に与えた損害を賠償する義務があること明かである。
よつて右損害額について按ずるに、被告の前記不法占有が昭和二十七年八月二十日以前に開始したことは弁論の全趣旨によつて明かであり、右土地の固定資産税評価額の坪当り価格が昭和二十七年度は金二千二百円、昭和二十八年度は金二千四百円、昭和二十九年度は金三千二百四十円であることは、真正に成立したと認める甲第六号証によつて明かであるから、右土地二十一坪一合の地代の停止統制額の一カ月分は昭和二十七年初から昭和二十八年三月三十一日までは昭和二十六年物価庁告示第一九二号により金百二円、昭和二十八年四月一日から昭和二十九年三月三十一日までは昭和二十七年建設省告示第一四一八号により金百五十一円、昭和二十九年四月一日からは右告示により金二百五円となる。
そして反対の事情のない本件では、被告の右土地不法占有により蒙つた原告の損害額は右停止統制額と同額であるというべきであるから、右統制額にもとずき計算するときは昭和二十七年八月二十日から昭和二十八年三月三十一日までの損害額は金七百五十三円、昭和二十八年四月一日から昭和二十九年三月三十一日までの損害額は金千八百十二円右の合計は金二千五百六十五円となること算数上明かである。
そうすると被告は右損害賠償として原告等に対し右金二千五百六十五円及び昭和二十九年四月一日から前記土地明渡ずみに至るまで一カ月金二百五円の割合による損害金を支払う義務があるというべきである。
よつて原告等の請求はすべて正当であるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条、仮執行の宣言について同法第百九十六条第一項を適用して主文のように判決する。
(裁判官 飯山悦治)